言語文化放浪記
〜きんかんなまなま:豊かな語彙が生まれる金沢編〜
放浪者が地域のことばに着目し、風土とともにことばに対する愛をお届けします!
3月号はまきこママの本籍、金沢のことば編です。
石川県金沢市。
まきこママの本籍地である。出身地ではなく、成り行きでそうなり、親戚たちが暮らしている。
最初、親戚たちの言葉に触れた時、ママは半分チンプンカンプンであった。
語彙がさっぱりわからなかったのである。
例1 母親が息子をたしなめる時。
「だらにも、だらにも。しっかりしまっし」→「バカだね、まったく。しっかりしなさいよ」
例2 何かを称賛する時。
「ほんまにりくつな!!」→「何とも素晴らしい!」
例3 小さな子どもがガツガツ何かを食べている時
「いや〜、がっぱになって食べとる」→「うわあ、必死になって食べてるね」
例4 母親に干渉されて鬱陶しい時。
「いじっかしいわ! ほっといて」→「鬱陶しいから、放っておいて」
例5 頭の良い子どもを褒める時。
「○○ちゃんは、はしかいしええねえ」→「○○ちゃんは、賢くていいねえ」
例6 コロッケ屋でサービスでもう一個もらって喜ぶ時。
「え? これおまけ? あたるの? あんがと」→「え? これおまけ? もらえるの? ありがとう」
例7 酔っ払ってきたことを相手に伝える時。
「なんや、いんぎら〜っとしてきたじ」→「なんだか、酔ってきちゃったよ」
例8 雪が積もった後、雨が降って止んで、道がカチカチのツルツルになっている時。
「ひゃあ。きんかんなまなまや。気いつけて歩きまっし」→「うわあ、ツルツルじゃん。気をつけて歩きなさいよ」
実に、たくさんの珍しい語彙があり、ママは金沢の言葉に慣れるまでに数年間を費やした。そして、あまりの語彙の豊富さに、感心している。いったい誰がどうやって、こんなにインパクトのある響きの言葉を生み出すのか。きっとまだまだ金沢には、ママの知らない言葉があるはず。
今年、大きな地震で被災した石川県。能登地方はひどいダメージだという。豊かな語彙を思い出すと同時に、1日でも早く復興することを祈るママであった。