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New Face of Japan

インタビュー記事

「グローバライズしたいけど、インテグレートしたくない国」
―統合なき国際化の現実:日本社会における外国ルーツの若者の経験―

Dさん(Part1/2)

2025年03月号

New Face of Japanは、多様でインクルーシブな日本社会の発展を目指して活動しています。多様なルーツを持つ方々にインタビューを行い、その声をイラストやインタビュー記事を通して発信しています。

Project Director: Richa Ohri (武蔵野大学)
Project Manager: Nanami Goto
記事編集:Sorane

グローバライズ:グローバル化

インテグレート:統合

インタビュアー:りょうた

編集:そらね

りょうた:   まず名前と国籍、それから親の国籍、日本で生まれ育ったのかというところについて教えてく

ださい。

 

Dさん:     名前はDです。(省略)私はスリランカ出身でスリランカ生まれですが、父の仕事の関係で5歳

のときに来日して、愛知県(省略)で育ちました。その時から今までずっと日本で育ってきたので、育ちはほとんど日本です。

 

りょうた  国籍は今どうなっていますか?

 

Dさん:   国籍はスリランカです。

 

りょうた:  ご両親はスリランカで生まれてスリランカで育ちましたか?

Dさん:   そうです。

 

りょうた:  ご自身のアイデンティティについてお話いただけますか?日本にある、もしくは何か複数のア

イデンティティを持つのかなどお教えください。

 

Dさん:  (自身のアイデンティティは)すごく複雑です。家族、両親はスリランカの価値観を持ってい

て、とてもトラディショナルな人たちです。家の外に出たら日本の社会や日本の人と触れ合ったりしますが、家の中にいるとシンハラ語で話しますし、(社会と家の)環境はまた全然別な感じなんです。今でもどこに自分が所属するのかというのは決められていません。

スリランカには3年に1回ぐらいの頻度で1ヶ月ほど帰ると、親戚や友達に会ったりするときあんまりステップ(stepped)*されないみたいなところがあります。何か話してる中でも、「まあ日本で育ってきたからわかんないでしょ」みたいなことを言われたりもします。それに対して、わかることもありましたし、別に向こうは排除したいからしているわけではないですが、その環境の人ではないと言われているように感じるようなこともあったので、半分半分(日本とスリランカ)かなと思います。日本で育ってきたからやっぱり日本のほうがもっと慣れてますし、スリランカで暮らせと言われたら多分とても大変だなとは思います。なので今ホームはどこなのかと聞かれたら、やっぱり日本かなと自分の中では思います。日本が認めてくれて、大学の制度、仕事の制度、ビザなどが私に優しければ、絶対日本を選んでいますし、そっちのほうがフレキシブルだと思います。

 *ステップ(stepped)...足を踏み出す(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

Dさん:   けれどもスリランカに毎回帰ると何か自由を感じます。パスポートを持って歩かなくていいで

すし、自由にブラブラしても怖がらなくてもいいです。日本の警察を見るとなぜか怖がってしまって、日本が自分のホームだと思いながらも、日本国民は自分を認めてないというのをすごく感じてしまっています。そこがやっぱり残念でちょっと悲しいと感じます。

▶グローバルと謳うわりにグローバルではない場

りょうた:   スリランカにいるほうが、見た目的にも順応してるみたいな感覚はありますか?​

 

Dさん:    そうですね。見た目的にはそうです。見た目だけで言ったらそうですが、そこで働き始めた

り、学校に行ったりするときは考えが合わなかったりするので、そこは合わないかなと思います。

 

りょうた:  わかりました。経験について話を聞いてきたのですが、そのような自身の背景が理由で周りか

ら違う扱いを受けたりすることはありましたか?学校や友達、日常生活などではどのようなことがありましたか?

 

Dさん:   お店に行ったときに英語のメニューを出されたり、日本語で話しをしても相手が英語で話をし

てくることがあります。

あと、一番大変だったのは学校の制度などですね。留学生でも日本人でもない人のための枠組みがなく、大学に入るときに奨学金などがありませんでした。私は家族滞在のビザで日本に来たのですが、大学に入学する2週間前ぐらいに家族滞在のビザを不許可されてしまって、両親と妹がスリランカに帰らなくてはいけなくなりました。たしか私が入学して次の日ぐらいにお母さん達がスリランカに帰ったと思います。それも強制で2週間以内に帰らなければならないといった感じでした。その後私は学生ビザに変えて、その間に奨学金にも申し込みをしました。

申し込みのために大学の支援課に行ったときに、日本国籍でも日本国民でもないので奨学金を大学の方では案内できないと言われ、自分で探してと言われました。留学生課では留学生じゃないから案内できないといったことを言われ、学部に相談に行ったら学部はお金関係は扱ってないからわからないと言われて、とても振り回されました。その後泣きながら支援課の相談室みたいなところに行って、「なんで私もここの学生なのに申し込みできる奨学金が何もないんですか」と相談しました。学部の人が支援課に連絡して(奨学金を)探してくれて、それでもすごい苦労して2ヶ月、3ヶ月してから案内がきて申し込みができました。そういうふうに自分から動かないと誰も何もしてくれなくて、大学ではグローバルと謳いながらも彼らの中には日本人と留学生しか存在しないんだと感じました。しかもビザの家族滞在のことも大学の方々は全然知らなかったんです。大学なのに全然知らないので、全然グローバルじゃないなとは思いました。

りょうた:  グローバルを謳ってるわりにはグローバルじゃなかったんですね。

Dさん:   大学にとってのグローバルというのは外国人の顔が映っていればグローバルという感じなのか

なと思ってしまいました。

▶強制される「日本の型」

りょうた:  自分自なるほど。高校や中学など学校生活ではなにかありましたか?例えば学校の先生からち

ょっと違う扱いを受けたり、友達関係で悩んだりなどはありましたか?

 

Dさん:     長○に引っ越した際にありました。引っ越す前の瀬○市にいたときは、インターナショナルス

クールに通ってたのですが、長○に引っ越してからは日本のローカルな学校に通いました。そのときにクラスメイトから顔の色が違うねとか、すごい色とか、雪が降っているときに、外と見比べてあなたと雪の色は反対だよねみたいなことを言われました。「だから何?」とか、「そうだけどなに?」みたいな気持ちになりました。

あとは給食のときに日本食をあんまり食べれませんでした。この学校の前の小学校ではお弁当で、他のお昼以外のご飯の時はお母さんのご飯を食べていたから、ほとんどの日本料理はマイルドであんまり好きじゃなかったんです。今はすごく好きですけどね。給食のときにすごい減らして食べていて、スープの中に団子が入ってるのがすごく気持ち悪かったんです。そのときに先生から、「あなたはこれから日本の社会で育っていくのだから、そういうふうに育たないほうがいい。」みたいに言われました。すごくいい先生だったんですけど、ステレオタイプ的で固い先生でした。日本の社会で生きていくんだから慣れなきゃいけない、食べなきゃいけないみたいな感じです。日本は外国人を受け入れても、日本風だったり日本の型に入らないと外国人をその人そのままでは受け入れてはくれないんだと感じましたね。多分、グローバライズ(globalize)*したいけどインテグレート(integrate)*はしたくないみたいな、そういう社会なのかなっていうふうに思っています。

 

 *グローバライズ(globalize)...世界化(国際化)(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

 *インテグレート(integrate)...統合する(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版) 

▶自分は外国人

りょうた:  なるほど。今教えてもらったことのように友達から何か言われることがあったときは、すごく

つらかったり、悲しかったりすることがあると思うのですが、どういうふうに自分の中で感情や悩みを処理していますか?

 

Dさん:     しょうがないかなと思ったときもありました。仲の良い友達だったらはっきりと「それはすご

い*レイシスト(racist)だよね」というふうに言ったりします。初めて会った人に「何人ですか」とかのように聞かれたりすると、その人に悪意がなくても腹が立ちます。なんで初めての質問が私の顔の色や*レイス(race)じゃなきゃいけないのか、好きな色とか何を勉強してるのかとか、何か私についてのことを質問すればいいのにと思います。他の国もあるかもしれないですけど、なぜか日本は国とか民族にこだわっていて、なんで聞きたがるのかなと思います。どうやって処理していたんですかね。その人に話さないか、怒るか、もし私に近しい人だったら話したりするかもしれないです(嫌だということを)。でも、そういう自分の国を問うような質問は週に1回はあります。

 

 *レイシスト(racist)...人種差別主義者(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

 

 *レイス(race)...人種,民族(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

授業中に何かプレゼンテーションをやっているときに、いきなり授業中に先生がプレゼンを止めて、「あなた日本語めっちゃ上手いね」とか「ちなみにどこの国なの?」、「どこから来たの?」とかを聞かれることもありました。それに対して「長○から来ました」というふうに答えると「いや長○じゃなくて国は?親は?」みたいな感じでルーツを聞きたがりました。そのときはすごいディプレス(depressed)*になります。家に帰って泣いたり、自分の中で溜め込むときもあります。でもそういうときに自分のような人のための活動をしている人や、理解してくれる人と話すと、繋がりを感じたり楽になる感じがします。

 

 *ディプレス(depressed)...落ち込んだ,意気消沈,がっかりする(出典:プログレッシブ英和中辞典第5版)

 

りょうた:  なるほど、わかりました。自分が日本で生活していく中で自分が外国人だなと感じる瞬間はあ

りますか?

Dさん:   それはもちろん。ビザとかですね。どこか行ったりするときに、友達は普通に入れたりするの

に、自分は違う申し込みをしなきゃいけないとかがあって、自分は仲間と同じコミュニティの人なのに「自分外国人だったのか」というふうに思い出させられます。やっぱり意識はみんなと同じなので。普通に大学に行って、同じことを学んでいる普通の学生だという意識があって、違うけど一緒みたいな感覚です。でも、みんなと違うように手続きをしなきゃいけないときにやっぱり気づかされます。「なんで私だけこれをやらなきゃいけないの」、「なぜ私だけこの選択肢しかないの」みたいなことを思って、同じことを学んだのに、同じことをしたいのに、「なんで私だけこんなに苦労しなきゃいけないのか」と思います。

 

今留学ビザなんですが、留学先から留学する人はあんまりいなくて、すごく少ないんです。私にとっては日本がホームですけど、今は留学ビザというふうにカテゴライズされていて、留学したいというときに大学の制度が当てはまらなかったり、民間の奨学金も少ないんです。オーストラリアなどの国に行くときは生活費とかが高いですが、一部の奨学金にしか申し込めなかったんです。メールでずっと日本にいるという状況を説明して、申し込めないですかと相談しても、日本国籍、(永住者や)最低でも定住者ビザをもってる人じゃなきゃいけないみたいに言われてしまって、私の人生がビザによってとても制限されているというのはすごい感じます。

▶自分はどこに所属するのか?

▶自分はどこに所属するのか?
▶グローバルと謳うわりにグローバルではない場
▶強制される「日本の型」
▶自分は外国人

(Part2へ続く)

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