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New Face of Japan

インタビュー記事

「いつか帰る人」ではなく、日本で生活している誰もが社会の一員と認める

サンドラさん(Part3/3)

2023年12月号

New Face of Japanは、多様でインクルーシブな日本社会の発展を目指して活動しています。多様なルーツを持つ方々にインタビューを行い、その声をイラストやインタビュー記事を通して発信しています。

Project Director: Richa Ohri (千葉大学)
Project Manager: Ryota Takahashi

記事編集者:Saori, Nanami

今回のインタビュイーであるサンドラ・へフェリンさんは、日本とドイツのミックスで、「ハーフ」に関する問題や多様性について様々な執筆活動をされています。このインタビューでは、ミックスルーツにまつわる経験や、世の中の現状への思いを語っていただきました。

 

インタビュアー:ななみ、かんた  編集:さおり

ななみ:       周りの人は「日本人だ/日本人じゃない」というのを、どういう部分で判断していると思

いますか?

 

サンドラさん:    見た目ですね。身も蓋もないようなんですけど、本当に。見た目で一回「あ、ガイジン

だ」と思ってしまうと、もうやることなすこと全部そこにつなげようとする人がいたりとか。私はドイツと日本のハーフの友達がたくさんいるんですけど、中には日本人の親に似ていてあまりハーフだとわからない子もいます。そういう人たちは、やっぱり「日本人」として周りに扱われていて、それはそれでまた問題です。そのあとで日本とドイツのハーフだと知ると、周りが「えー、残念だね。もっとガイジンっぽかったら良かったのにね」と言ってそれはそれでまた傷ついたり。みんなそれぞれ抱えてるものがあると思います。

ななみ:       サンドラさん自身は、どういう風に判断してほしいと思いますか?

 

サンドラさん:    あんまりステレオタイプにこだわらないでほしいですね。自分を見てほしいっていうのが

あります。私はドイツにルーツはあるんだけど、ドイツっぽいものが全部苦手です。例えば、ドイツといえばサッカーだけど、サッカーには全く詳しくなくて、ワールドカップで誰が勝ったとかも全く知らないんです。あと車。免許も持ってないから当然車は持ってない。それからビール。飲めるけど、そんなにガブガブ飲むってわけでもない。だから、そういう話をされてもちんぷんかんぷんでわからない。いわゆる「ドイツのイメージ」の期待には添えないかなあと。

めんどくさいだろうけど、本人(ミックスルーツの方)を目の前にした時に、その人がどういう人なのかっていうのを探っていくしかないんじゃないかと思います。入り口としては、そういうのもいいかもしれないけど、あんまり国のイメージでいかない方が良いと思いますね。
 
そういうこともあり、私はあまり気軽に「海外では〜」という言い方はしません。これも自分が「ハーフ」だから、こういうことに敏感なのかな、と思います。

ななみ:       先ほどの、たまごっちの話とも通じますね。

▶「どうせいつか帰る人」という扱いはやめようよ

かんた:       日本社会における多様性について、課題と思うことや、注目していることはありますか。

サンドラさん:    「多様性が無くてもいいじゃない」と言える時代はもう終わっていて、外国にルーツを持

つ人ももう多いです。彼らは何年かしたら母国に帰る人たちでは必ずしもなくて、日本社会にいる人たちなんです

そうすると、多様性を大事にしていくしかない。だけど、難しくて…入り口は広い方が良いと思うんですけど、異文化交流とか、食べ物を食べるとか、そういうことで終わってほしくないなと私は思うんです。やっぱり、社会の一員として、その人たちの悩みとかを理解しないといけないと思う。

Twitterなどで話題になっていたのが、日本の校則で「この髪型は良い、この髪型はだめ」というのがあるけど、黒人のハーフの子どもはその通りにできなかったりするから、学校に抗議をした人たちがいるんです。するとそれが認められるようになって、少しずつ社会は変わっていっている。外国にルーツを持つ人達のニーズに合わせて、社会の「こうあるべき」という価値観を変えていくしかない。それが本当の多様性なんじゃないかと思います。

かんた:       僕が思うに、ひとことで多様性や多文化社会といっても、ドイツは日本よりもずっと多く

の移民を受け入れていたり、労働できる人も多くいるじゃないですか。そこで、もともとドイツにいた人達と、新しく入った人達の間で意見が食い違ったりしますよね。でも、日本における多様性については、ドイツのように論点がしぼられていないように感じるんです。

サンドラさん:    やっぱり、「日本で生活している誰もが社会の一員だ」と認めるかどうかだと思います

ね。ドイツでは、「どうせいつか国に帰る人」とかそういう扱いではないんです

ドイツのメルケル首相(当時)はそこを結構わかっています。ある会合でのスピーチによると、ドイツにおいていわゆる白人とは見た目が違う人(黒人の二世三世など)は、ドイツに生まれてドイツで育ってドイツ語しか話さないのに、「あなたはどこから来たの?」とドイツで聞かれるんです。彼女自身はおじいさんがポーランド人だけど、彼女は白人だから昔も今も「どこから来たの?」とは聞かれない。それはメルケル首相としてはあまりよろしくないことで、「何世代も前からドイツにいる人に『どこから来たの?』と聞くのは良くないことで、ドイツ人としてちゃんと認めましょう」と言っています。私もそれには賛成です。日本もそうなればいいなと思いますね。

あと、人間はどうしてもめずらしい方に興味を持ってしまうから、例えば日本とフランスのハーフですと言うと、すぐフランスの話になる。だけど、その人は半分日本人であるわけだから、ちゃんと日本人として認めてあげるってことが大事だと思うんです。「あの人は外国人だ、外国人も認めよう、それが多文化だ」じゃなくて、「その人が日本人である」ことを認める。昔からの日本人の見た目や価値観に合わなくても(黒髪ではない等)、その人には日本国籍があって、片方の親は日本人なんだし、周りが「日本人」として認めることが多様性なんじゃないかと思ってます。

ななみ:       本人が自分自身をどう捉えているのか、それを尊重することが大切ですよね。

サンドラさん:    日本に帰化した外国人や、日本と外国のハーフを、「ああ外国人ね」というのではなく、

「外国にもルーツがある日本人なのね」と認めることが多様性だと思う。言葉ってすごく大事で、「外国にルーツがある日本人」って言い方も良いんですが、厳密に言うと、私の場合、「外国に【も】ルーツがある日本人」なんです。日本に【も】ルーツがあるんですよね。そこを正しく周りの人に理解してほしくて、絶対にきっちり伝えたい

▶国際交流フェスティバルに思うこと

サンドラさん:    多様性というと、一歩間違えると「国際フェスティバル」みたいな、いろんな国の食べ物

を食べて、日本人と外国人が交流して、みたいなものを想像しがちですけど、私はそれあんまり好きじゃなくて。

かんた:       国際交流フェスティバルについて最近気になっていて…ちょっと浅い、軽いというか。文

化って思想や考え方とも繋がっているじゃないですか。でも国際交流フェスティバルでは、なかなか相手の考え方や内側にフォーカスできないですよね。

サンドラさん:    そうそう、浅いですよね。人の考え方にフォーカスするのは良いと思います。

 

何年か前に、ある国際交流フェスティバルでため息をついたことがありました。そこで私はいろんな国のジェスチャーをテーマに20分くらいの講演を日本語ですることになっていました。会場にはいろんな国の食べ物やイベントがあったので、講演の前にいろいろ回っておやつを買ったりしていたんですが…そこの屋台の人に「ハロー!」って言われたんですよ。私はこれから日本語で講演するのに、完全に外国人枠に入れられた…って思って。ちょっとここは私がいる場所じゃないかもと思いました。しょうがないんですけどね。そこで外国人のふりをして「ハロー」と返すのか、日本語で「大丈夫です」と言うのか…悩ましいところですね。だからそういう、自分が外国人として出演しなきゃいけない、外国人としてふるまわなきゃいけない場所は、ちょっと大変ですね。

ななみ:       なるほど…。

サンドラさん:    事実通りにやってほしいですね。例えば名札を作るなら、ドイツだけじゃなくて、ドイツ

と日本って書く。そういうのはこだわりたいですね。

ななみ:       異文化交流フェスティバルで扱われるものって大体すごく表面的なもので(ドイツといえ

ばサッカー、など)、私はそれってすごく危険だなと思うんです。もし小さい子どもがそういう場に行ったとして、その後で実際に海外にルーツを持つ人を見たら、本人のことを理解するより前に「自分とは違う」ことを意識してしまって、からかいの言葉としてそういう表面的なイメージが使われてしまうこともあるのかなと思っていて。

サンドラさん:    そうですね。子供の頃、日本の公立の小学校に転校したことがありました。転校生なので

職員室で先生を待っていたら、職員室の窓から学校中の子が見に来ちゃってて。「アメリカ人だー!」とか、しばらくすると「ディス・イズ・ア・ペン!」とか、どこかで習った英語を言ってきた。もうすごく嫌。馬鹿にされてるようだし、おかしいですよね、人の顔見て「ディス・イズ・ア・ペン!」って。言われてもあんまり面白くないし…。

『ハーフを考えよう!』にこの間書いたんですが、近所のデパートで買い物をしてたら、どこかから「ハロー!」って声がしたんですよ。で、やだなぁまた英語で話したがる人が言ってきたと思って振り返ったんですけど、言ったと思われる人がいない。あれ?って思ったら、そこにはオウムがいたんです。近づいたらまた「ハロー!」って言って、もう大笑い!人が言ったと思ってぷりぷり怒ってたら、オウムが喋ってたっていう。「ハロー!」「ディス・イズ・ア・ペン!」とかは、さんざん言われたので、まただと反応しちゃいますね。

かんた:       多分日本の子どもたちはそんなに悪気はないと思うんですけどね。マイクロアグレッショ

ン的なものがありますよね。

ななみ:       本日は本当にありがとうございました!

かんた:       ありがとうございました!

サンドラさん:    ありがとうございました。

インタビューPart2を終えて

(インタビュアー ななみ)

日本がこれから変わっていくためには、政治が変わることが必要不可欠になると再認識しました。国のリーダーが差別に反対だと明言するのとしないのとでは大きな違いがあると思いますし、今の日本ではそんな当たり前のことすら言ってくれないというのが現状です。政府が移民や技能実習生を労働力としか考えていない限りは変われないと考えます。

▶「日本人だ/日本人じゃない」というジャッジ

▶「日本人だ/日本人じゃない」というジャッジ
▶「どうせいつか帰る人」という扱いはやめようよ
▶国際交流フェスティバルに思うこと
インタビューPart3を終えて
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