

しんちゃんの教師物語(18)
しんちゃんが今教えている大学では
何らかの理由で日本語をとらなければいけなくて日本語を履修している学生は少ないです。
強いて言えば中国研究の大学院生だけでしょうか(詳細は編集後記を!)。
とりたくて履修しているのに、
どうして何人かの学生は途中で日本語を勉強することが嫌になってしまうのか、しんちゃんはよく考えます。
ある年、言語をいくつか話せる留学生が一年の日本語の授業を終えた後にこんなことを言ってくれました。
―――――
私は今まで教室という場所で言語を勉強したことがなくて自然といくつかの言語を話せるようになりました。
言語を学ぶことが好きだし、日本語も好きだけど、私は教室という場所で
みんなと一緒にみんなと同じペースで教科書で言語を勉強するのに向いていないと思います。
これからも日本語学習は続けたいけれど、残念ながら日本語の授業を取るのはやめますと…
――――――
考えてみるとみんなで文法と語彙、その使い方を同じペースで勉強していくというやり方は
いろんな言語の学び方のほんの一つの方法にしかすぎません。
自分のペースでなく、途方もない数の語彙や漢字を決められたペースで学習し、
テストや小テストを毎日のように受けているうちに、
どうして日本語を勉強したかったのかを忘れていってしまうのかもしれません。
どうして日本語を勉強したかったのかを思い出してもらうため、ほんのささいなことですが、
ずいぶん前から初級の授業の最初に「今日のフレーズ」という時間を5分程度設けています。
それはどんなものかというと、授業内容とまったく関係なくてもいいので、
アニメやドラマ、本、ネット、あるいはだれかが話している時に聞いた日本語の言葉やフレーズ、
あるいは、英語のスラングや言い回しで日本語では何というのか、
うまく辞書で探せなかったものなどなんでも聞いてみたいことを2、3取り上げるというコーナーです。
この「今日のフレーズ」は、最初はいつもあまり学生から質問が出てこないのですが、
授業が軌道に乗り始めると、しんちゃんがなんでもおもしろがって取り上げるからか 、
5分では終わらないほど質問が溢れます。
毎回学生からどんなものが出てくるか全く予想もつかないため、
しんちゃんもいつもこの「今日のフレーズ」を楽しみにしています。
これまでにどんなものがあったか…貴様、俺様などの人称代名詞の違い、
行こうぜなどの終助詞のニュアンス、おおきになどの方言について、
アホ、ゲップなど授業であまり取り上げることのないような言葉、Lameなどのスラング…
(とここまでまとめて、20年以上もやっていておもしろい質問もかなりあったのに、
しんちゃんは意外に覚えていないことに気づきました。これからはちゃんとメモしておこう!)
この「今日のフレーズ」では、まずしんちゃんが答える前に、
ネットやオンラインの辞書にはなんと書いてあるか調べてみようと学生に聞いています。
(何人か学生は調べるのが本当に早く、一瞬で情報を見つけてきます!)
その後、人称代名詞のように人によってイメージが異なるものは、
聞いたことある人はどんなイメージを持っ ているか、聞いてみます。
出るわ出るわ。いろんな日本語に触れ、観察力も鋭い学生も多いです。
(でも、授業以外の教材には全く興味がないというような学生もいます)
その後、しんちゃんのイメージはこんな感じだけど人によってイメージは異なると思うので、
どんな状況でどんなキャラの人がどういうトーンで使っているかよく見てイメージを作っていったらいいよ、
いろんな人にもどんなイメージを持っているか聞いてみたらいいというようなことも話しています。
すると、しばらく経ってから授業で前に取り上げた言葉を
授業中にさらに調査し報告してくれる学生もいます。
ある学生が初級言語のクラスについてこんなコメントをしていたことがありました。
初級の教材は比較的初級の学生が分かるように語彙や文法がコントロールされたものが多いけれど、
そういうものだけでなく、わからなくてももっともっと学習言語で
いろんなものを見たり読んだり聞いたりすることが大切だと…
これも全ての学生に当てはまるわけではないと思いますが、この学生は中国語も勉強したことがあって、
過去の言語学習の経験を色々振り返ってその時よかったと思うものは
積極的に日本語学習にも取り込もうとしているようでした。
本当に自分に合う学び方は学生によって違います。
他にも授業が始まる前に
毎回誰かの好きな歌や映画、本、アニメ、ゲーム、YouTubeなどのビデオを流して、
授業の最初に簡単に30秒で説明してもらうということもしています。
自分の好きな作品を授業で取り上げてもらったということで、
授業の後に感謝の言葉を言ってくる学生もいます。
とにかく好きなこと好きなようにする。
下手の横好きでも、好きこそものの上手なれでもどちらでもいいのだと思います。
継続は力なり!ですから…
(編集後記)
中国研究の分野では日本の研究者の研究論文を読めるようになることが大切だと考えられていて、
アメリカの多くの大学で中国研究の博士課程に在籍する学生は
日本語を2-3年履修することが必須になっています。
しんちゃんの勤務校でもそうです。